昔通っていた空手道場は、大声を出すのがルールだった。
「では次、正拳突き!」
「オス!1・2・3 セイヤー!回って!」
「セイヤー」というのは空手で多用される気合である(意味は不明)。
「回って」というのはターンするときの掛け声だ。
狭い道場だと、移動しながら正拳突きすると3回で壁に当たってしまう。そこで「回って」逆方向を向くわけだ。
そんなこんなで常に大声を出していた。
現在の空手道場はコロナの影響で様変わりしている。
なんと。声を出さないらしい。
師範は「気合は心の中で」と指導。
弟子は「師範の心の気合、ちっちゃくて聞こえない」とつぶやく。
それはそうだろう。空手の稽古ではテレパシーやフォースは身に着かない。
一方、空手団体(全世界空手道連盟新極真会)ではガイドラインを出している。
気合・掛け声の欄には
「気合はセイヤーではなく、セイッ、またはセッ」
とある。うむ。細かい。心の気合の方がいいような。
「セッ」だと、かなり速いパンチじゃないと打ち終わらないような気もする。
声を出さなくなったのは空手道場だけではない。
ある居酒屋では「オーダーいただきました!」などの掛け声をやめたそうだ。マスクで声がこもるのが理由だが、やめてみたら意外と快適らしい。店内の雰囲気が落ち着くとのこと。客の回転が良くなるといわれていたBGMもやめてしまった。JASRACへの支払も無くなり経費節約になったとか。
やめてみると実は不要だった。アフターコロナではそんな気づきが増えるのかもしれない。