感染防止策

年に数回病院に通っている。
今回は初のコロナ渦中での訪院だ。

院内は想像通りの厳戒態勢だった。
入口でまず消毒そして検温。
スタッフは、フェイスシールドまたはゴーグル+マスク+手袋など重装備。
血圧は外で測定、結果はプリントし診察室で先生に見せる旨の指示が。
診察時間を減らすためらしい。

この様子だと診察室内の先生の装備も相当なものだろうと想像した。
原発視察時の政治家とか、アウトブレイクのダスティンホフマンとか。
ところが。

先生は、半袖の白衣にマスクのみ。
他のスタッフに比べかなり軽装だった。

診察をいつも通り終え、診察室を出て気づく。

「会話が無い」のだ。

先生からは
「変わりありませんか」
「前回の検査結果です」
「次回はx月x日で良いですか」
の3つの質問のみ。

対して、私が発した言葉は3回の「はい」だけ。
飛沫は少量。感染リスク低。

日頃から短い診察だなぁとは思っていたが、感染対策だったのか?

3分診療などと揶揄されることが多い日本の医療。
だが感染防止策としては非常に有効である。

とはいえもう少し愛想よくなりませんかね。
せっかく直接お会いしてるわけですし。

巣ごもり

帰宅する。まず手を洗う。
買ったものの表面を水で流す。
スマホをアルコールで消毒する。
着替える
顔を洗う。
最後にもう一度手を洗う。
あぁ面倒くさい。日に日に段取りが増えている。
もう今日は外出したくない。

ようやくすべての段取りが終わり、落ち着いたころ、彼女から
「シャンプーが無い」
とのこと。

自分で買に行くのは嫌らしい。
彼女曰く、出かける前のメイクやら服選びが面倒らしい。
なるほど。
彼女は休日ほとんど外に出ない。
出かける前の段取りが面倒なのだ。

一方、私はこのコロナ生活で、出かけた後の段取りが面倒である。

かくして買い物は先送り。

出かける前後が「面倒」という、「自粛要請」とは全く異なる理由で、巣ごもり生活は順調に進んでいくのだ。

距離感

車のスピーカーから声が聞こえてくる。
「みなさん。大田区長です。新型コロナウィルスの影響で…」
おぉ。区長自ら自粛を促すため奔走していらっしゃる。
と思いきや、車はパトカー、乗っているのはお巡りさんであった。
録音を流しながら走っているようだ。
まぁそうだろう。区長さんは忙しいのだ。

昔、缶コーヒーのラジオCMで
「こんばんは。ブルースウィリスです」
というのがあった。
通風孔をはい回っている映像が浮かんできたが、よくよく考えたらブルースウィリスは日本語話さないだろう。
あなたはブルースウィリス役の声優さんではないか。
まぁいい。テレビCMはブルースウィリス本人だったし、そもそも英語で言われてもわからないのだ。

著名な人との距離感はこんなものだ。

だが、最近は近しい人との距離感も開きつつある。
仕事がらみの打ち合わせはほぼオンライン会議になった。
友人とは、数ヶ月会っていない。
これで、コロナに感染したら、家族と話すのもオンライン。

いやはや。早く操作に慣れておかないと。

ネーミング誤り

海外ドラマで、特定の地域で発生した殺人事件に「XX通り殺人事件」と命名したことを諌めるシーンがあった。「XX通り」という先入観に縛られ、他の地域を見逃す可能性が高まるからである。ドラマは案の定、関連のあった殺人を見逃す展開となった。

今回のコロナ対策でも、同様の誤りが展開されているようだ。

コロナ関連窓口を「帰国者・接触者外来」とした結果、国内での非接触感染者は混乱に陥った。「クラスター対策班」という組織名にしたがために、市中感染軽視・見逃しが起こった。

日本だけではない。

イギリスでは
「Stay at home, protect the NHS, and save lives」
の標語のもとNHS(国営医療サービス事業)を注視しすぎ、介護施設での死傷者を見逃した。

ここ数日は「家賃給付」という言葉が散見される。
費用中「家賃が最も高額」という理由から、家賃に対して給付を行うらしい。
だが、事業によっては家賃よりも従業員給与やライセンス料などの固定費が大きいところもある。
緊急事態において、ネーミングによって起こる見逃しをこれ以上発生させてはならない

アルコール不足

消毒用アルコールが不足している。
幾分ストックしてあったのだが、それも尽きつつある。
残りは2週間分といったところか。

周りの方々も不足していることだろう。

そんな中、ある酒造メーカーが消毒用アルコールを発売した。
発売されたパッケージには英語で

It is a sake that can remove bacteria from cooking utensils
(調理器具から菌を除去できるお酒です)
と記載されている。

実態は消毒用だが、表向きは飲酒用。
制度や法律を変えず、裏技で対応する、いかにも日本的な手法である。
製造・開発において関係省庁に丁寧な「ご指導」をいただいたそうだ。

独特の法律や税制などの結果、生まれてきた製品が日本にはいくつかある。
例えば軽自動車。
税制の抜け道を探った結果生まれた、日本独自の車種である。
自動車評論家によっては自動車の中の「奇形児」と表現する人もいた。いまだったら「ガラパゴス」というべきか。
発泡酒や第三のビールも同様だろう。

とはいえ消毒に使えるのであればありがたい。早速菊水酒造のウェブサイトを見てみた。
取り扱いは2本セットのみ。
価格は2,640円である。
一本500mlあたり1,320円。
手元の「カビキラー キッチン消毒アルコール」は350mlで300円ぐらい。
1,320円÷500ml×350ml=924円 vs カビキラー 300円

…約3倍ではないか。
酒造メーカーは「2018年7月豪雨時の支援恩返ししたい」という思いで製造したそうである。その思いには大いに敬意を表するが、ここまで高価なものは掃除には使えない。
当面、ハイターなどを駆使するしかないか。

しかし、トイレットペーパーやらマスクやら。もう少し柔軟に物事が流れないものか。