バーの店主が嘆いていた。
「アルコールが足りないんですよ」
いや、その後ろの棚に沢山ある…ではなく消毒用アルコールの話だ。
いまだ近隣のスーパーの商品棚は空きっぱなし。酒造メーカーが参入したが、主にネット販売なのか、店頭ではまだ見かけたことがない。
そんな消毒用アルコールの代替品として注目されていたのが次亜塩素酸「水」である。ところが、先日以下のような報道があった。
「次亜塩素酸水、噴霧での利用は控えて」
「買ってしまったジアイーノは危険なの?」
「ドラッグストアの次亜塩素酸水でスプレーしてるんだけど?」
など困惑が広がっている。
さらに、経済産業省、NITE(製品評価技術基盤機構)、国民生活センター、さらにはWHOなど様々な組織の発した情報が断片的に報道され、混乱に拍車をかけている。
そこで、散らばっている情報をまとめて整理してみたいと思う。なにぶん素人なので正確性に乏しい。本記事を活用する際は、掲載リンクを確認し、個々人で判断いただきたい。また、コロナウィルス対策効果のみについて記述し、ノロウイルスは除外する。手指の消毒も除外し、消毒対象は物品のみとしている。
最初に、私の結論から申し上げると「現時点では使わない」となる。
1.次亜塩素酸「水」 vs 次亜塩素酸「ナトリウム」
次亜塩素酸「水」 と、次亜塩素酸「ナトリウム」は全く違うものである(そう考えた方が安全)。
大半の方がご存じかと思うが、間違えると大変なことになるので念のため記述する。
次亜塩素酸「ナトリウム」はキッチンハイターなど「まぜるな危険」と書いてあるもの。噴霧すると大変危険である。以下のような被害も発生している。
「肺に白い影」医師も驚愕…原因はまさかの“過剰コロナ対策
結論。次亜塩素酸「ナトリウム」はコロナ対策では使わない(使う必要はない)。もっと安全に使える商品(かんたんマイペットなど)が沢山あるからである。
新型コロナウイルスに有効な界面活性剤が含まれている製品リスト
2.液体での使用について
ドラッグストアやネットショップで販売されている、容器に入った次亜塩素酸「水」について。これらは効果があるのだろうか。
結論は「わからない」である。
経済産業省・NITEともほぼ同じ声明を出している。
「次亜塩素酸水の新型コロナウイルスに対する効果については、検証試験が継続中であり、まだ結論は出ていません」
ただし、有効な可能性がある消毒の候補として継続調査されている。新たに購入する必要はなく、結論を待てばよいだろう。
3.気体(噴霧 ・ 気化)での使用について
以下では次亜塩素酸水は効果がある、という前提で話を進めていく。
空中に散布する「噴霧」についてはどうだろうか。
学校で次亜塩素酸水「噴霧しないで」、文科省が注意喚起
重要なのは報道などで問題になっているのは、「噴霧」つまり加湿器や霧吹きなどで霧状(ミスト)にして空間に撒く行為で「気化」ではない、ということである。
加湿器(超音波式)やスプレーはアウト、ジアイーノは「噴霧」ではなく「気化(揮発)」しているため、セーフに見える。
ただしWHOの見解詳細をみると非推奨は「噴霧」だけではない。
●消毒剤噴霧等の非接触手法
屋内空間では、噴霧や霧化(燻蒸、ミスト散布とも)による環境表面への消毒剤の日常的な適 用は、COVID-19 については推奨されない。<中略>消毒剤の噴霧は、目、呼 吸器または皮膚への刺激、及びそれに伴う健康への影響を引き起こすリスクをもたらす可能性が ある。<中略>また、屋外であっても、消毒剤を散布することは人の健康を害する可能性がある。
「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート) より
「消毒剤噴霧等の非接触手法 」を非推奨としている。
具体的には、噴霧・燻蒸について推奨しないとあるのだ。
燻蒸(fumigation )は「気化」して行う消毒と考えてよいだろう。
したがって、WHOによれば次亜塩素酸水の
・霧状に噴霧する霧吹きやスプレー・加湿器による散布
・気化して散布するジアイーノ等製品による散布
は推奨されない、ということになる。
一方、経済産業省やNITEは「噴霧」については、未調査のため見解を示さず、
メーカーが提供する情報、経済産業省サイトの「ファクトシート」などをよく吟味し、ご判断をいただければと存じます。
としている。つまり「自分で考えなさい」ということだ。
とはいえ、素人では判断しようがないことも事実である。
現在、ジアイーノは新規受注を一時停止している。だが、既に購入した人に向けて、メーカー・行政機関とも情報提供を行ってほしい。