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ディスカスの飼い方

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fishTank.jpg大崎善生氏は恋愛小説家である。2002年出版の「パイロットフィッシュ」は、ある程度の年齢の男の「夢」のような恋愛や女々しさそしてセンチメンタルが描かれていた。


深夜2時。昔付き合っていた女性から電話がかかってくる。「もしもし、私です」。そんな場面からストーリーが展開していくのは、この「ディスカスの飼い方」もよく似ている。当然似たストーリーを期待していたのだが、大きく裏切られた。


この本はまさに「ディスカスの飼い方」が書かれているのである。ページのほとんどがディスカスという熱帯魚の飼育に関連することであり、「パイロットフィッシュ」ではあくまで添え物だった熱帯魚の話題に、段違いのボリューム・情熱が割かれている。ところがその余りの僅かなページに描かれた、かつての恋人との会話や想像、それだけで恋愛小説が成立しているのだ。


私は大変楽しめたが、この作品を面白いと感じるかどうかは、あまりに緻密に書かれている熱帯魚の飼育やその周辺事情などが面白いと感じるかどうかにかかっている。個人的には男性の方にお勧めである。